整形外科 千代田区/日本大学病院 板橋区/板橋病院

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〒173-8610 東京都板橋区大谷口上町30-1

お問い合わせ03-3972-8111

診療研究班の紹介 medical_research

日本大学医学部には板橋病院、日本大学病院の附属2病院があります。
2病院とも整形外科一般疾患から高度な専門医療を必要とする疾患まで、あらゆる疾患に対応しています。

脊椎班

2020年4月より中西一義主任教授を迎え、新体制のもと現役17人で活動しております。
日本脊椎脊髄病学会認定指導医が5名おり、「だれでも理解しやすく、より安全な診療。」をモットーに、精力的に脊椎脊髄疾患や外傷の診療にあたっています。
手術は多岐にわたり、腰部脊柱管狭窄症に対する椎弓切除術、インストゥルメンテーション手術、頚椎症性脊髄症や、頚椎後縦靭帯骨化症に対し椎弓形成術、脊柱変形に対しての矯正固定術、外傷による脊髄損傷や脊椎骨折に対しインストゥルメンテーション手術、脊椎腫瘍に対すし脊椎全摘術、脊髄腫瘍に対し腫瘍摘出術を行っており、患者さん1人1人に合わせて様々な術式で対応しております。

近年のニーズに合わせ低侵襲手術にも積極的に取り組み、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症に対して内視鏡下手術や顕微鏡下手術も行っております。
また高齢化に伴う転移性脊椎腫瘍が増加しており、ADLを維持し、がん治療を円滑に受けていただくために経皮的椎弓根スクリューを用いた最小侵襲脊椎安定術も積極的に行っております。より安全に手術を行うために脊髄機能モニタリングを併用しております。
我々の研究班では有効性、安全性を評価しながら個々の患者さんが社会復帰に向けて少しでも有益となる手術法を目指して臨床研究にも力をいれて頑張っております。

下肢班

私達の関節グループは主に、四肢の変形性関節症、関節リウマチに対する治療を行っています。
特に、人工膝関節置換術は東日本の大学病院の中で最も手術件数が多く、日本全国においても2番目の症例数を誇っています(2018年344件)。
また、当教室において日本人用に開発した人工膝関節を現在までに約8000関節以上施行しております。
このため、当教室には経験豊富なスタッフが揃っており、一度の手術で両膝を行う両側同時人工関節手術も積極的に行っています。
また膝関節の手術治療では人工関節のみでなく、関節鏡視下手術や骨切り術など患者様の病期に合わせた治療法を選択し治療を行っております。
股関節疾患も年間100関節ほどの人工股関節置換術を中心に、骨切り術などの治療もやはり病期に合わせて行っております。
また、現在は低侵襲の人工関節手術も積極的の取り入れ、より患者様の負担が少ない方法で手術を行っています。
関節リウマチに関しては薬物療法から手術まで、総合的な診療を行うことを心がけております。
新しい治療薬である生物製剤に加え、他のリウマチ薬、関節注射などを使用しながら、関節の破壊や変形が生じない治療を、また生じてしまった場合でも適切な手術を経験豊富なスタッフで行っています。
手術時期をしっかり見極められることも我々の強みと考えております。
リウマチによる肩、肘、手、指、足首、足の指などの変形にお困りの方は是非ご相談ください。
どの手術に対しても、術後合併症等を心配される患者様も多いと思います。
当方は特定機能病院としての大学病院ですので、術後の管理、合併症対策には万全の体制が整備されておりますので一般病院よりも安心して手術を受けることが可能となっております。
何かご相談ありましたら月曜日から金曜日まで関節の専門医師が外来におりますので、是非ご相談ください。

スポーツ班

スポーツ医学研究班は、プロのアスリートから学生の部活動、そしてレクリエーションレベルの中高年の方々に至るまで、スポーツ活動による様々なケガや障害を対象に、基礎 研究活動と臨床診療活動を行っています。
基礎研究分野では、膝前十字靭帯の治療に関するテーマで、解剖や靭帯再建術後の組織成熟に関するテーマをメインに行っています。臨床診療に関しては、チームドクターとしてスポーツ現場へ積極的に出向き、スポーツ選手をトータルにサポートできるDrを目指し活動しています。そして可能な限り全身の運動器の診断・治療を行います。

診断の際には、一般整形外科的診察所見以外にも隠れた原因となる機能障害部位を見極め、各関節の連動や影響を意識した診察を行います。
治療に関しては、保存加療・リハビリテーションを積極的に検討実施します。エコーも積極的に使用し、エコーガイド下fasciaハイドロリリースなどを用いた非手術的治療方法を行い、これまで対処に困っていた障害や痛みにも取り組んでいます。
手術加療では、関節鏡下手術(膝関節・肩関節・肘関節・足関節)が大半を占めています。近年は、膝の自家培養軟骨移植術などの再生医療と組み合わせた中高年の膝OAに対する骨切り術も積極的に実施しています。競技種目は、野球、アメフト、ラグビー、陸上、柔道、フェンシング、スキー・スノーボードなどのアスリートの受診が多くあります。

【主な手術】
  • 関節鏡視下膝ACL再建術(PCL再建術、MPFL再建術)
  • 関節鏡視下膝半月板縫合術
  • 関節鏡視下肩関節唇修復術
  • 肩関節鏡視下肩腱板修復術
  • 膝周囲骨切り術
  • 自家培養軟骨移植術
  • 投球障害肩・肘手術
  • 足関節靭帯修復術・足関節鏡手術

詳細はこちらへ ⇒ スポーツ医学研究班ホームページ

上肢班

上肢班では、肩甲体から上腕、肘、前腕、手関節、手指にいたる範囲の疾患・外傷を研究、診療しております。

骨折、腱損傷、末梢神経障害、スポーツ障害・外傷などが主な治療対象です。全てに手術を行うわけではなく、手の骨折や脱臼などは、整復して外固定をしたり、テーピングで部分的に運動を抑制したり、骨折整復が安定する肢位を得たら関節が拘縮しないように早期に運動するなどの保存的治療で治療可能な場合も多くあります。それを見極め判断し、患者様と相談しながら治療を進めてまいります。また、全身麻酔手術のみでなく、局所麻酔による日帰り手術が多いというのも他の診療班にはない特徴です。

 

【主な対象疾患と術式】

  • 手根管症候群 : 直視下、鏡視下手根管開放術
  • 肘部管症候群 : 尺骨神経皮下前方移動術、小皮切単純除圧術
  • 母指CM関節症:関節形成術、関節固定術
  • 手指の骨折 : 経皮鋼線固定術、創外固定術
  • 橈骨遠位端骨折 : プレート固定術
  • 上腕骨内・外側上顆炎:直視下、鏡視下病巣掻爬
  • 肩腱板断裂:鏡視下腱板断裂修復術
  • 反復性肩関節脱臼:鏡視下肩関節唇形成術

腫瘍班

【概要】

骨および軟部組織(筋肉、脂肪、神経、血管など)からできた腫瘍のことを総称して『骨軟部腫瘍』と言います。

  • 小児から高齢者まで幅広い年齢層に発生
  • 手足の先から頭まであらゆる部位に発生

 

骨軟部腫瘍は以下の図のように分類されます。

骨軟部腫瘍

 

  • 原発性:骨から発生したもの
  • 良性もしくは悪性骨軟部腫瘍に分けられます。その中でも骨もしくは軟部組織から発生した悪性骨軟部腫瘍を肉腫と言います。特に悪性骨軟部腫瘍は、現在でも治療が難しい病気のひとつです。そのため治療できる施設は限られています。
    治療としては、手術、放射線治療、化学療法が大きな三本柱となります。当院では骨軟部腫瘍領域全般にわたる診断、治療を行っています。

  • 移転性:他の部位の癌から血液を介して骨に飛んできたもの
  • がんは二人に一人罹患する時代になり転移性骨軟部腫瘍の発生頻度は増えてきています。主に脊椎、四肢長管骨などに転位することが多く疼痛、病的骨折、切迫骨折、下肢麻痺など様々な症状を呈し、日常生活動作を低下させてしまいます。
    このような患者さまには原発巣科と早期に密な連携をとり当科が介入し必要に応じて手術などを十分に検討しできるだけ日常生活動作を保つように治療していきます。


  • 血液系:血液疾患(多発性骨髄腫や悪性リンパ腫など)が骨・軟部に発生したもの
  • 血液系腫瘍の中で多発性骨髄腫は骨に悪性リンパ腫はリンパ節や軟部組織に腫瘤を形成することがあり当科を初診する患者さまも多く存在します。これらの疾患の一部は当科で診断をつけ、血液膠原病内科など関連する科と早期に連携をとり診療にあたっていきます。


【治療方針】

原発性骨軟部腫瘍の9割以上は良性です。しかし、その中には悪性腫瘍が隠れており正確に診断し治療を行う必要があります。

治療方針
当院では、初診から診断、そして手術までの期間をできる限り短縮し早期に治療開始できるように行っております。また、整形外科だけでなく放射線科、形成外科、血液膠原病内科、病理部など密に連絡をとり治療を行っていきます。

 

【扱っている疾患】

  • 「原発性骨軟部腫瘍」
  • 良性骨軟部腫瘍:外骨腫、内軟骨腫、脂肪腫、神経鞘腫など
    中間型骨軟部腫瘍:骨巨細胞腫、高分化型脂肪肉腫、デスモイドなど
    悪性骨軟部腫瘍:骨肉腫、軟骨肉腫、脂肪肉腫、未分化多型肉腫、粘液線維肉腫、滑膜肉腫、平滑筋肉腫など

  • 「転移性骨軟部腫瘍」
  • 肺がん、胃がん、大腸がん、前立腺がんなどからの転移


  • 「血液系腫瘍」
  • 多発性骨髄腫や悪性リンパ腫など


【スタッフ】

  • 吉田行弘:日本大学板橋病院(リハビリテーション科 部長代行、診療准教授)
  • 大幸英至:日本大学板橋病院(整形外科 科長、准教授)
  • 小島敏雄:癌研有明病院に出向中
  • 高田夏彦:日本大学板橋病院(整形外科 助教)
  • 伊藤友久:日本大学板橋病院(整形外科 専修医)
  • 榎本郁子;横浜中央病院に出向中
  • 佐藤裕介:川口市立医療センターに出向中

 

【研究】

  • 臨床研究
  • 厚生労働省の検討会で「概ね罹患率(発生率)人口10万人当たり6例未満」「数が少ないため診療・受療上の課題が他のがん種に比べて大きい」これら二つの条件に該当するがん種を、『希少がん』と定義しています。
    骨軟部腫瘍は希少がんであり、しかも組織型が多岐にわたるため、限られた患者数の単一施設では治療戦略の構築が困難な疾患です。標準的治療を開発するためには臨床試験が必要です。日本大学板橋病院では以下の臨床研究に参加しています。

  • 日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG) ※公式サイトはこちら
  • JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)は、国立がん研究センター研究開発費(旧がん研究助成金)研究班を中心とする共同研究グループで、国立がん研究センター中央病院臨床研究支援部門が研究を直接支援する研究班の集合体です。がんに対する標準治療の確立と進歩を目的として様々な研究活動(多施設共同臨床試験)を行っています。


     

  • 骨軟部肉腫治療研究会(JMOG) ※公式サイトはこちら
  • JMOG(骨軟部肉腫治療研究会)は、肉腫に対する多施設共同研究や、新規治療薬開発のための臨床試験を推進する全国規模の共同研究グループです。


  • 基礎研究
  • 骨軟部腫瘍は発生頻度が少なく発生ならびに進展などわかっていないことが多く存在しています。当科では以下の基礎研究を行っています。
    ・TRAILならびに大気圧低温プラズマ(AGP)による骨肉腫治療の基礎研究(特にミトコンドリア断片化アポトーシスにおける役割の解析)
    ・ヒトガン細胞におけるミトコンドリア分裂阻害薬Mdivi-1を用いたTRAIL誘導性アポトーシスの解析研究
    ・骨肉腫におけるmiRNAの作用機序


【実績紹介】

①内軟骨腫(良性骨腫瘍)

手足の短い骨に多く発生する腫瘍で痛みや骨折で見つかることがありますが、X線検査で偶然発見される事もあります。骨折の危険性のあるものは当科で考案した自家製の掻爬器具で手術を行っております。
<特徴>
・小さい創からでも十分に掻爬できる。
・自由に先を曲げることが可能で奥まで掻爬可能である
・洗浄しながら行い水圧でも掻爬できる。

掻爬器具

 

症例
症例:末節骨内軟骨腫。末節骨に骨腫瘍を認める。骨開窓後人工骨を充填した。

 

②骨巨細胞腫(中間型骨腫瘍)

骨巨細胞腫は成人の長管骨骨端部に好発する骨破壊性腫瘍で、良性ですが再発しやすく、まれに肺など他の臓器に転移することがあります。すべて取りきる(切除)か、掻き出す(掻爬)かを、腫瘍の状態により決定します。
※当院では再発率を下げるためにハイスピードドリルで十分に掻爬するだけでなくセメントやアルコール処置など補助療法を積極的に導入しています

また、手術困難な症例に対して、腫瘍を硬くする(硬化)デノスマブ(商品名ランマーク、抗RANKL抗体)という薬剤を投与する場合もありますが、腫瘍が完全に治るわけではありません。

症例
症例:腸骨発生骨巨細胞腫。腸骨に巨大な骨腫瘍を認め腎臓、尿管の圧迫・変位を認める。

 

症例
ランマーク投与による骨巨細胞腫の変化。
ランマーク投与により腫瘍周囲が硬化性変化を示しSurgical downstagingが可能であった。

 

症例
切除しセメントにて腸骨翼を再建

 

③骨肉腫(骨悪性腫瘍)

小児期から若年成人に発生することが多い腫瘍で、進行が非常に速いためできるだけ早く治療を開始する必要があります。
抗がん剤→手術→抗がん剤と、数か月にわたる治療を要することが多く、当院は小児抗がん剤治療チームと密に連携しており、小児患者さんも治療可能です。
腫瘍を完全に切除し根治する事が最も重要です。多くは関節周囲に発生しますが、関節の機能温存と機能再建を目指していきます

症例
症例:大腿骨骨肉腫。
化学療法における骨肉腫の変化:腫瘍の縮小を認める。
大腿骨をすべて切除する広範切除後人工関節にて置換した。

 

④軟骨肉腫(骨悪性腫瘍)

軟骨を作る細胞ががん化した腫瘍です。40、50歳以降に多く発生し、手術が唯一の治療法です。当院では症例に応じて、手足を残す(患肢温存)目的で、切除した骨を液体処理窒素し、体内に戻す再建を積極的に導入しています。

症例
症例:肩甲骨発生の軟骨肉腫。肩甲骨に骨腫瘍を認める。

 

症例
術後レントゲン:液体窒素処理骨を元の場所に戻し鎖骨をプレートにて固定した。肩の脱臼は認めない

 

⑤転移性骨腫瘍

悪性骨腫瘍の中で最も多い腫瘍です。癌の治療中に上記の症状で判明する人もいれば、がんを患ったことがないのに、腰や足の痛みで骨転移が判明する人もいます。
※初発症状が骨転移の人は早急に原発巣を発見し早期に原発巣科への橋渡しを行っていきます。

痛い部位の手術と、どこに癌があるか判明させるため全身検査を同時進行で行います。
※内科や外科と密なやり取りで、円滑な治療を目指しています。

症例
症例:腎がん転移性骨腫瘍。
がんの既往がなく原発不明がんとして初診時病的骨折で受診された。小転子の病的骨折を認める。全身精査したところCTにて右腎臓に腫瘍を認めた。
病的骨折予防で髄内釘固定術を行った。その後泌尿器科にて腎臓摘出を行った。

 

症例
術後経過:術後経過で腫瘍の増大があり、術後38カ月で髄内釘の折損を認めた。その後に髄内釘も含めて大きく切除した。
人工関節にて再建した。術後は自立歩行が可能であった。